第12章 波乱の夏休み
同時刻、暇を持て余したナミは山の遊歩道で散歩をしていた。
ルフィは昼寝、ゾロはセンゴクと剣道の稽古。アンは少しやつれた顔で朝食を食べていて心配して声をかけると、「二日酔いなの」と笑っていた。
ローとコラソンは、昼前にここを発つらしい。もうちょっと一緒に過ごしたかったなと思う。
ルフィに振り回される大人を見るのは楽しかったし、アンちゃんも嬉しそうだった。
ローは今朝からやたらアンちゃんが起きたのか気にして聞いてきた。
(あの後、会えたのかしら?結構お似合いだと思うんだけどな)
面倒見がいいアンは色恋沙汰には疎い。
それどころか、あえて恋愛とは無縁でいようと避けているようだ。
アンはあまり自分の話はしない。ルフィの子どもの頃の話はよくするのに。しかも長い。
父親のことだって、亡くなったものとばかり思っていたら急に現れてビックリしたばかりだ。
"アンちゃんて彼氏いないの?"
一緒に暮らし始めた頃、聞いたことがある。
"そんなのいないよ"とアンは苦笑して目を逸らしたけど、ナミは食い下がった。
"じゃあ、最後にいたのはいつ?"
"そうねー、昔過ぎて忘れちゃったわ"
いたことあるんだ、とナミは思った。口には出さなかったけど。
(元カレってどんな人だったんだろ……。
もったいないなぁ。アンちゃんならいろんな男から貢がせれそうなのに。トラ男くんもきっとーー)
「アン」
パッとナミは振り返る。彼の声がした方を。