第12章 波乱の夏休み
(そういやルフィは、どこにいるのかしら…?)
朝食の後、洗濯を済ませたら一番に気になるのは不肖の弟のこと。さっきナミには会ったし、ゾロはセンゴクに稽古をつけてもらうと喜び勇んでいたけれど、ルフィの姿が見当たらない。
いつも大声で騒いでいるから、どこにいるかすぐわかるのに。
アンが外に出て辺りを散策していると、駐車場でローとコラソンが荷造りしていた。どうやら今日帰るらしい。
「それにしても機嫌良いよな、ロー。そんなにココ気に入ったのか
?」
「まぁな」
いつもみたいに眉間に皺が寄ってないし、こんなに穏やかな顔をしているローを見るのは久しぶりだ。
リラックスできたんだなとコラソンは満足していた。
楽しそうに談笑しながら車に荷物を載せる二人をアンは遠くから見る。
今はハイスペックイケメンにどうしても会いたい気分じゃなかった。
またあの夢を思い出してしまう。平常心を保てそうにないから顔を合わす前にさっさと帰ってほしい。
アンは足早にその場を離れると山の方に向かった。
彼の視線にも気づかないまま。
山の入り口は緑が生い茂った木々のせいで人がいるのか見えにくい。また虫取りでもしているのかしら、と思いつつ歩きながらルフィを探す。
「ルフィ〜?ここにもいないの?」
本当に落ち着きのない弟。お腹が空いたら戻ってくるだろうけれど。
まるでかくれんぼの鬼のようにひとつひとつ人が隠れていそうな場所を潰していく。
そのとき背後からザッと足音がして、振り向こうとした瞬間。
「…弟なら座敷で昼寝してたぞ」
その声にギクリとした。今一番会いたくない相手が背後にいる。