第12章 波乱の夏休み
"好きだ"
こんなストレートな告白は今までしたことがない。
誰かに、想う気持ちを言葉にして贈るだけでもこんなに緊張するものだったのか。
触れるだけでもキスをしたのは明らかにやり過ぎだと気がついていた。
それでも止められなかった。憂いた瞳をした彼女を自分のものにしたいという気持ちを。
だけど失敗したかもしれない。
瞬きもせず、固まってしまったアンの顔をローは覗き込む。
「…おい…?」
その声にハッと目を見開いて我に返ったと思ったら、アンは酒瓶を引ったくってそのままゴクゴクと飲み干した。
(泡盛を原液で…!)
「バカか!?やめろ!」
「うるさいな!バカはそっちでしょ!」
酒瓶を床に放り投げると、呂律が回らない口でそう言い放ち、アンは立ち上がった。
真っ直ぐ歩けないらしくふらふらと柱に掴まりながら、ローから離れていく。
(……やっちまった…)
頼りないアンの後ろ姿を見ながらそう思った。
せっかく途中までいい感じだったのに。