第12章 波乱の夏休み
ローがスイカを頬張っていると、コラソンがほうほうの体で戻ってきた。
「水をくれ……!!」
コラソンはアンからグラスに入った水を受け取って、ゴクゴク飲み干した。ふーっと一息つく。
「すみませんでした、コラソン先生。弟達は後で叱っておきます」
「大丈夫だよ。おれが勝手に転んだだけだし。
ロー、少しは休めたか?」
「ああ、十分だよ」
ローが寝ている間、コラソンはルフィ達と缶蹴りをしてえらい目に遭ったようだ。
服は土ぼこりで薄汚れて、身体は擦り傷だらけだ。散々転びまくったとみえる。
バーベキューの前に温泉に入ってくると言うので、ローもコラソンに倣うことにした。
「あ〜、ごくらくだなぁ〜」
赤ら顔で天井を見上げるコラソンはすっかりきれいになって上機嫌だ。
離れにある温泉の湯船は熱いぐらいで、すごく気持ちがいい。疲れが一気に吹き飛ぶ。
なのに気分は晴れなかった。
「コラさん、さっき遊びに行ってたのってわざとか?」
「ん?何のことだ?」
コラソンは二人きりにしようとしてくれたのかもしれない。何となくそう思った。
「…いや、別に」
どうしてあの女はこんなにおれの感情をかき乱すのだろう。手に入らなくてイライラするのに、諦めもつかない。
その後もわざわざいい肉を買ってきたのに、焼く役目を担ったアンが気になって仕方ない。軍手をはめて煙まみれになって色気なんてないのに。
バーベキューの後も弟達やコラソンは花火なんかして盛り上がって、嬉しそうにそれを見つめるアンと、自分は別の世界にいるみたいだった。