第12章 波乱の夏休み
ちりんちりんと広間では風鈴の心地良い音色が響く。
「あ〜〜、疲れた〜!」
畳に大の字になって転がったコラソンに倣って、ローも横になった。
窓から入ってくる風は爽やかで涼しく、体感温度を下げてくれる。
(本当に疲れた…)
普段しない運動にローは丁度良い疲労を感じて、目を閉じた。
「お待たせしました」
「しーっ」
スイカを持ってきたアンはコラソンの視線を追うと、大広間の畳の上ですやすやとローが寝息を立てていた。
「ここのとこ、激務だったもんで。少し寝かしてやってくれ」
弁当を取りに来ない間はアンもローに会うことはなく忙しいんだなぐらいにしか思っていなかったけれど、以前にも増して深い隈に少し痩せた顔からコラソンの言葉通りだったことは窺い知れる。
「ウチの病院、有給とかきっちり取れる方なんだけど、ローだけは例外でさ。代わりがきかないのを本人もわかってるからどうしても頑張っちゃうんだよな」
彼が患者や同僚達から頼りにされているのは同じ病院で働いていれば痛いほどわかる。
いつも気を張って、疲れが溜まっているのかもしれない。
コラソンはスイカを頬張る。センゴクが丹精込めて作ったスイカだ。小玉だけど甘くて美味しい。
(こんな美味しいスイカ、食べれないなんて勿体ないわ)
「スイカ、冷蔵庫に入れてきます」
ローは起きそうにないし、そのまま置いていたらルフィに食べられてしまうから。
台所に行った足で、アンはタオルケットを取って大広間に戻る。途中でルフィとコラソンに会った。
「ねーちゃん、ゾロとおっさんと一緒に缶蹴りするんだ!」
「おっさんて呼ぶのやめなさいって。コラソン先生だってお仕事で疲れてるのよ」
「大丈夫だよ、アンちゃん」
コラソンはにこにこ笑うけど、ルフィの遊びに付き合うなんて明日筋肉痛で起き上がれなくなるのは目に見えていた。
(コラソン先生、ごめんなさい……)