第12章 波乱の夏休み
目の前の座敷でアンとルフィ、ナミとゾロがくつろいでいる。ついに幻覚まで見えるようになってしまった。
「あ、トラ男!久しぶりだなー!」
ルフィが飛びかかってきて、思わず避ける。
「何するんだよ」
「元気だったか?うわー、隈ひでー!」
「センゴクさんの知り合いってトラ男くんだったのね。すごい偶然!ねぇ夏のボーナス出た?いくらもらった?」
「教えるわけないだろうが」
ナミも興味津々といった様子で寄ってきた。
何だ、このリアルなやり取りは。
(幻覚じゃない……)
「あれー?アンちゃん?
そっかそっか、だってガープさんの孫だもんな。ルフィくん、大きくなって」
「おっさん、誰?」
「えー、おっさんって、ショック……」
直後に鈍いゴンッという音がした。アンのゲンコツが炸裂して、ルフィの頭にはたんこぶがみるみる膨れ上がった。
「いってぇ!!」
「こんにちわ、コラソン先生。
センゴクさん、ルフィがお素麺全部食べちゃったから茹でてきます」
「わしも行こう。しかしロシーの連れとも知り合いだったとは、よかった」
今までにこにこと静観していたセンゴクも立ち上がる。
(ていうか、おれには挨拶なしかよ)
アン達の祖父、ガープとセンゴクは同期で今でも交流がある。知り合いの孫とは彼女達のことだった。
広々した座敷にルフィはごろんと横になった。畳は新調したばかりなのか真新しく、気持ち良さそうだ。
「でもルフィくん達って沖縄に帰省するって言ってなかった?」
「ああ、だって沖縄は台風だもの。飛行機が飛ばなかったの」
コラさんの問いに答えたのはナミで、今沖縄は大型台風が上陸していて交通機関はすべてストップしている。
今更旅行先を変更することも難しく、それならと祖父のガープがセンゴクに連絡してくれて、快く四人を受け入れてくれたそうだ。