第12章 波乱の夏休み
昼食の準備ができているからと言われていたので、荷物を置いたらすぐに1階に降りた。
1階にはエントランスと大広間があり、庭には小さな池も見える。離れには温泉もあるらしい。
一人暮らしでは寂しいぐらい広いが、外には野菜畑と鶏小屋があり、家主は充実した毎日を過ごしているのだという。
定年退職して、都会の喧騒から離れて悠々自適に暮らすなんてちょっとうらやましい。
ローがそう話すと、コラソンは意外だと笑った。
「ローって田舎暮らしのイメージないよな。歳取っても、都会の高層ビルで優雅に過ごしてそうだよ」
「そうか?」
確かにそれなりにスポーツはできても、アウトドアはあまり経験もなく得意ではない。
子供の頃は夏休みに家族で海に行ったり、キャンプ場でコテージに泊まった程度。外でカエルを追いかけた思い出はあるものの、成長すると同時に外遊びとも無縁になった。
その点、アンの家族はサバイバルは得意そうだなと思う。
特にあの弟。常に落ち着きなく動き回っているし、なんていうか全身のバネがすごい。たぶん無人島でも生きていける。
「あー、腹いっぱい。ねーちゃん、晩メシなんだ?」
そんな想像をしているとルフィの声が聞こえてきて、片手で耳を塞いだ。
「どうした?ロー」
「いや、幻聴が……」
聞こえるはずがない声が聞こえるなんてよっぽど病んでる証拠だ。
「ルフィってば、お客さんの分まで食べちゃったの!?」
おまけにアンの声まで聞こえてきた。
休暇が終わったら精神科医に診てもらった方がいいだろうか。