第12章 波乱の夏休み
四方を緑に囲まれた広大な土地に古民家風の建物がある。
玄関は広い土間のようになっているが、静まり返っていて人の気配はない。
「こんにちわー!センゴクさーん!」
コラソンが呼びかけるとしばらくして足音と共に大柄な老人が姿を現した。
コラソンを見てすぐに駆け寄る。その顔は穏やかでかつての警察のトップだとは思えない。
「センゴクさん、お世話になります。こっちは友人のロー」
「二人ともよく来たね。ゆっくりしていくといい」
ローが会釈するとセンゴクはうんうんと微笑んだ。コラソンに部屋番号を書いた木札付きの鍵を手渡すと、部屋は2階で荷物を置きにいくように言った。
元々2階が客室という造りになっているらしく、廊下を挟んで部屋が並んでいる。
コラソンが持つ木札の番号の部屋は10畳ほどの広さの和室。
二組の布団とちゃぶ台に座布団という簡素な設備だったが、タダで招いてもらったんだ。十分だと言えるだろう。
建物の裏には川が流れていて、窓からは川のせせらぎと鳥の鳴く声が聞こえた。都会にはない癒される空間が仕事漬けだったローの心を和ませる。
「ロー、気に入ったか?」
「…ああ、コラさんありがとな」