第12章 波乱の夏休み
翌日は雲ひとつない晴天に恵まれた。
日頃の行いがよかったからに違いない。
休暇中の行き先は、コラソンの知人の家に行くことになった。
定年後山奥にある廃業した旅館を買い取って、スローライフを楽しんでいるその知人はかつて警視総監まで務めた人物だという。
警察官だった頃のコラソンの恩人で、息子のように接してくれた人で今も交流があって、今回も元々彼を訪ねる予定だったらしい。
「ローのこと話したら是非って!なんか知り合いのお孫さんも遊びに来てるらしいけど、気遣うなってさ」
「ふーん」
元はコラソンの愛車、フェラーリに荷物を積み込む。
目的地までは車で2時間程。一度行ったことがあるというコラソンが運転するというが少し心配だ。
「今夜はバーベキューするっていうから、いい肉買って行ってやろうぜ!あとエビとかホタテもいるかな?」
コラソンは張り切っていた。空回りしなければいいが。
「クーラーボックスとか持ってきてんのか?まだ距離があるだろ」
「あー…、よしまとめて買おう!」
途中のスーパーでバーベキュー用の肉や魚介など色々買って更に車を走らせる。
そのうち山の中に入り、景観も緑豊かになってきた。すれ違う車も少なく、分岐が多くなってきて似たような道をカーナビに従って車を走らせる。
「コラさん、休憩するか?運転変わるぞ」
「大丈夫だって。もう少しだったはずなんだけど」
(迷ってないだろうな…)
一抹の不安を感じながら、コラソンを信じて助手席にもたれていると古い立看板に気がついた。
消えかけてはいるが、旅館まであと直進1キロと書いてあってコラソンが心底ほっとした顔をした。