第12章 波乱の夏休み
その日の夜は久しぶりにコラソンと外食に行った。
小料理屋は残念なことに休業日で、同じ東の海商店街にある「ゾウ」という定食屋に入った。
「はいはーい、お待たせしましたー!」
やたらテンションが高い、うさぎによく似た少女が食事を運んできてくれた。
ローは焼魚定食、コラソンは野菜炒め定食だ。
「ロー、明日から行きたいとことかあるか?ずっと家にいるのももったいないだろ?」
「そうだなァ…」
とはいえ行き先なんて簡単に思いつかない。どこか近場の保養地でゆっくり過ごしたいが、夏休みの今はホテルだって取りにくいだろう。
「わざわざ混んでる観光地には行きたくねぇな」
「だよなー」
相槌を打つコラソンを不思議に思う。
ローは例外として、普通はそれぞれ診療科の医師で協力し合いながら順番で休暇を取る。美味そうにキャベツを食べる彼の休みは前から決まってたはずだ。
「コラさんこそノープランだったのか?」
「いやぁ、どうしようかなぁ。ロー、田舎って好きだったっけ?あまりに何もないからなぁ……」
「何言ってるか全然わからねぇ」
焼魚を食べながら聞き返すが、コラソンの話は要領を得ない。
どうやら行き先の候補はもうあったらしい。