第11章 おばんざい
レイリーはよっこらしょ、とローとひとつ席を空けて腰をかけた。
マキノがカウンター越しにレイリーに話しかける。
「今日は奥様はご一緒じゃないんですか?」
「ああ、少し機嫌を損ねてしまってね。いやいや前髪を切ったのに気づかなかったというだけなのに、おかげで今日の夕飯はナシだ。全く女性は恐ろしい」
そうは思わないか、と急に初対面のローに水を向けてきて少し驚く。
「…そうですね」
「この人はそんな苦労してないですよ。モテモテだもん」
御膳に乗せたビールと料理をレイリーの席まで運んできたアンの声だった。
彼女は慣れた手つきでビール瓶を持ってレイリーにお酌する。
何も言っていないのに、酒と料理が出てくる時点でかなりの常連客だと確信した。酌までしてもらえて、うらやましい。
「そうか、医者というのはうらやましいな。若い娘さんがたくさん寄ってくるのだろう」
だから何で医者というのがバレているのだろう。またあの従兄弟達の仕業だろうか。
「ルフィから話は聞いてるよ。いや、友を助けてもらって感謝してるんだ。息子ほど年は離れているがね」
「友?」
「シャンクスさんのことよ。古い友人なんですって」
「好き勝手していたから、あのまま死んでも本望だったかもしれないが……。若い娘が悲しむ姿は堪え難いものがある。なあ、アン」
「私は悲しんだりしないわよ」
(どの口が……。オペの説明してたとき、涙目だったじゃねぇか)