第11章 おばんざい
「ベック、来てくれたの?」
ベックマンを病院の1階で見かけたアンは破顔して駆け寄る。
「ああ、保険の手続きとか色々あるからな」
「ありがとう。助かるわ」
洗濯物を持ってきたアンも一緒にシャンクスの病室に向かう。
「しかし、和解できてセイラもひと安心だろう」
「和解金せしめるの忘れたわ」
「頭から金は出てこねぇだろうなぁ」
冗談を言いながら、病室に着く。
シャンクスはローと何やら話をしていた。回診中だろうか。
「………さすがにじじいと結婚されたくねぇじゃん?できたら孫の顔も見たいしさ」
カーテン越しにすぐに何の話をしているのか見当がついた。
自分のタイプをとやかく言われたくはないし、しかも他人に話すなんて言語道断だ。
「……お話中、失礼します!」
シャッとカーテンを開けると、中でシャンクスがヤバいという顔をした。
「人のこと、とやかく言わないでくれる!?自分は籍入れてもらえなかったくせに!」
「うわ!古傷が!」
シャンクスは胸を押さえて痛そうなポーズをした。医者の前ではやめてもらいたい。
「それに別に年上と結婚しても自由でしょ?私の高校の同級生、ミホーク先生と結婚したし」
「マジかよ!?ミホークが教え子と?」
シャンクスはミホークとも知り合いだった(昔、ライバル関係にあったらしいがよく知らない)。
ミホーク先生もベックマンもレイリー師匠も強くてジェントルマンでかっこいいと思うのが何故いけないんだろう。
「なんだお前、年寄りの恋人でもいるのか?」
ベックマンが意外そうにアンに問いかける。
彼氏はいない。以前アンはそう言ってたけど、嘘だったらどうしようとローは内心はらはらした。
「いないけど。それにどうしても年上ってわけじゃないし、私より強い人がいいだけよ?」
よかったと、ローが胸を撫で下ろしたのも束の間。
「そんなのそうそういるわけねぇだろ」
シャンクスとベックマンはため息を吐きながら顔を覆った。