第10章 青い果実
「…ん…?」
ほんの数秒、呼吸を奪われたからかアンが薄目を開けた。
「エース…?なにして…」
お互いの唇にはキスの余韻が残ったまま。心臓の鼓動が爆発しそうなほど早く強くなる。
目の前にいるのは、従姉妹じゃなくてひとりの女の子だった。
細くて長い手足はTシャツとショートパンツから無防備に晒されていて、胸元からは豊かな谷間が覗く。
「ちょっと、エース…!?」
理性がどこか遠くに行ってしまって、ブレーキがきかない。
床に押し倒して、逃げられないように両手首を握りしめて首筋にキスをする。
普段ならぶん殴られるか、思いきり蹴られて一発KOだろうけど、驚き過ぎて力が入っていないみたいだった。
それをいいことにTシャツの中に手を入れて、下着のホックを外そうとしたとき、納戸のドアが開く音がした。
「……アン?いるのか?
って、うわ…。お前ら、何やってんの…」
驚きと少し嫌悪感が混じったサボの声。
途端に理性が駆け足で戻ってくる。
(おれ何で…、最低だ…)
「そこのけよ!」
サボに頭を引っ掴まれて、思いきりぶん殴られた。全然手加減されてなくて口の端が切れて血が滲む。苦い。
「ごめん…」
「おれじゃなくて、アンに謝れ!!」
アンは背を向けて服を整えていた。
「…あのさ、ごめん、アン」
「……ごめんじゃないよ!エースのばか!サイテー!!」
アンは顔を真っ赤にして、それ以上は何も言わなかった。
「おれはアンをきょうだいだと思ってる。だから女としてなんか見れない。お前はどうするんだ。きょうだいの絆を捨てる気か?」
「…いや、おれだってアンはきょうだいだよ…」
自分で言っておきながら、説得力のかけらもなかった。だけど、今まで築いた絆だけは失いたくない。
「だったら、このことは三人だけの秘密だ。それぞれ墓場まで持っていくんだ」