第10章 青い果実
待ち合いの長椅子で待っていたエースとサボと合流して病院を出たのは真夜中だった。
ルフィは大あくびをしながらサボに半分抱えられて、その一歩後ろをアンはエースと肩を並べて歩く。
「ありがとね、明日仕事なのに。エースとサボがいてくれてよかった」
ローの説明を冷静に聞けたのも、オペの間待てたのも、二人がそばにいて支えてくれたからだった。
「シャンクスにはガキの頃すげぇ遊んでもらったし、先に帰っても気になって眠れなかっただろうからな」
それ以上に泣き顔のアンが心配だった。
彼女は母親を失ったあのときの姿によく似ていたから。
不意にお互いの指と指がぶつかる。
「ごめん、近かったね」
「別に」
アンの指を絡め取って、握りしめる。細くて長い指はやっぱり節が目立つ自分の指とは違う。
「無理すんなよ。何かあったらいつでも駆けつけるから」
「…うん、ありがと」
アンは視線を落とすと、絡めていた指をほどいてルフィの元に向かう。
「ルフィ、おんぶしようか?」
「さすがにもうお前じゃ無理だろ。来るか、ルフィ」
「おれ、エースがいい〜」
「よっしゃ!」
エースはルフィをおんぶすると、張り切って一番前を歩く。広い背中が心地良いのか、ルフィは数秒で夢の中だ。
ルフィに振られて悔しそうなサボは半歩後ろに下がってきた。
「サボも今日はありがとう」
「困ったときはお互い様だし。…エースになんかされそうだったらすぐに言えよ。飛んでいって卵みたいに頭蓋骨握り潰してやる」
「大丈夫よ。…約束したんだから。墓場まで、でしょ」
「そうだな」
いつまでもこの絆が続きますように。