第2章 彼女の一日と弟の放課後
ある日の弟達の放課後
キーンコーン…、カーンコーン…
♦︎16:30 校門前
「あ〜〜、腹減った!!ゾロの奴まだかな?」
「アンタ、そればっかり。もうすぐ新人戦だから顧問と話してるんでしょ?」
ルフィとナミは校門前でゾロを待っていた。
三人が通う、私立グランドライン高校では部活動は例外なく水曜日は休みと決まっている。
学校が終わるとルフィは毎日空手道場に行く。その前に腹ごしらえに行くのがいつものことなのだが、今日はナミとゾロも一緒だ。
「ゾロ〜〜!!腹減った!早く行こうぜ!!」
「お前ら、先行ってろってんのに」
「いつも迷っちゃうくせに」
ふふっとナミは笑う。ゾロの方向音痴は筋金入りだ。
三人そろってのれんをくぐったのは、学校からほど近いラーメン屋『黒足』。
「いらっしゃい…。何だよ、またお前らか」
ドアが開く音に店主サンジが振り返った。店内は10 席程度の小さな店。この時間はほとんど客はいないのだが、今日は珍しくカウンターの隅でアフロ頭のガリガリの男が静かにラーメンをすすっていた。
店は半年前にオープンしたばかり。実はサンジはルフィの姉、アンの友人レイジュの弟だというから世の中は狭い。
「毎日毎日飽きねぇなぁ、ルフィ。あ、ナミさんは毎日来てもいいからね!」
「はいはい」
三人はいつものカウンターに座る。ルフィは週6日、ゾロとナミは週2日ペースで店に来る。
「ヘイ、お待ち!」
ほかほかの湯気と共に注文したとんこつラーメンが出てきた。
「やっぱり美味ぇ!!」
「これも食え。まだ試作品だけど、アンちゃん考案の柚子胡椒入りの唐揚げ」
「おいし〜。さすがアンちゃん!」
「作ったのおれなんだけどね、ナミさん。ま、いいけど」
「ぐるまゆにしては上出来だと思えば、アン姉のパクリか…」
「何だと!マリモのくせに生意気だな!」
二人がいつものように口喧嘩をはじめた。ゾロとサンジは出会ったときから何故か仲が悪い。
腹が減っては戦はできぬ。
ルフィとゾロは目にも止まらぬ勢いでラーメンを平らげる。ナミはゆっくり味わいながら。サンジは満足そうにそれを見つめていた。