第10章 青い果実
アンはよく納戸の中で隠れて泣いていた。ルフィに見つからないように。
そんな彼女がいたたまれなくて、すぐに追いかけたんだ。
「お前さ、シャンクスにあんな態度……」
とるなよ、と納戸のドアを開けながら言いかけてエースは口をつぐむ。
中ではアンは膝を抱えて、声を殺しながら泣いていた。
(……また一人で泣いてる)
あんな態度をとって傷ついたのは自分の方なのだろう。咽び泣く姿から目が離せなかった。
何も言わずに肩が当たるぐらい近くに座って待っていると、10分ぐらいしてやっとアンは顔を上げた。
「……エース、いつからいたの…?」
「ちょっと前かな」
アンは赤くなった目をゴシゴシ擦る。
「ダメなお姉ちゃんね、ルフィはもう泣かないのに」
葬儀のときまではルフィはわんわん泣き叫んだが、今はけろりとした様子でアンのそばにいた。
姉に甘えてまとわりついているように見えるがあれはあれでアンを守っているつもりなのかもしれないし、実際アンは弟に救われていた。
今のアンの存在意義はルフィだ。
あいつがいなければ母親の後を追うんじゃないかとまで思うまで落ち込んでいた。
「無理するなって、じじいも言ってただろ」
そう言って頭をぐいっと胸元へ引き寄せると、「そうだね」とアンは少し笑ってそのまま目を閉じた。