第9章 彼女の願い事
(隻腕で、ジャーナリストで、赤髪……?絶対偶然だよ…)
仕事が終わって、何となく足はICUに向かった。
(でもどうせ入れないし、あの人じゃないかもしれないし……。大体家族いないとか言ったんでしょ?別に確かめなくても…)
「……おい。おーい、アン!」
「わっ!サボ??」
目の前に従兄弟が急に現れて驚く。
「ずっと呼んでたのに、ぼーっとしてどうした?」
「どうしたって、サボこそ何してるの?」
サボは私服だった。仕事でこの病院に来たわけじゃなさそうだ。
「んー、職場の仲間から隻腕で赤髪の中年男性をここに運んだって聞いてさ。おれはピーンときたわけ。もしかしたらって」
「……わざわざ確かめに来たの?暇ね……」
顔をそらしたアンは息を吐く。何度も深呼吸してもざわつくこの気持ちは治らない。
(あーあ、こじらせれるだけ、こじらせちゃったからなぁ……)
「あ、ねーちゃん!!」
「きゃあ!?」
背後から抱きつかれ、回し蹴りを喰らわそうと思ったがすぐに弟であることに気づく。
「もールフィ、びっくりさせないで…」
「これは皆さんお揃いで」
ルフィの背後にはエースがいた。二人を見て「よぅ」と右手を上げる。
「…何でエースがいるの…」
「おれはマルコ先生の診察の帰りにルフィに会ったんだよ」
「ウソップが学校の階段から転がり落ちて、念のため1日だけ入院するっていうから見舞いにきた!」
「ウソップくん、大丈夫なの?あんたまさかそれに絡んでるんじゃないでしょうね?」
ルフィが原因なら今頃スモーカー先生から連絡がきていると思うけども。
「ひでぇなあ。おれはこうやって腕伸ばして助けようとしたんだぜ!ゴムみたいに伸びてつかめる気がしたんだ」
「で、お前らは二人で何やってんの?」
アンとサボは困って顔を見合わせる。
これにて全員集合なり。