第9章 彼女の願い事
患者と一緒にICUへ行くとビビがいた。
チョッパーと同期の研修医の彼女は地方出身で、実家は総合病院を営んでいる。いずれビビがその病院を継ぐそうだ。
ビビはチョッパーのすぐそばにくると「お疲れ様」と微笑む。
「私の患者さんはひと段落したから、一緒に見ていてもいい?銃創なんて珍しいから」
父親と同じ内科医を目指しているが、ビビは総合診療に興味を持っていた。何でも診れる医者じゃないと田舎ではやっていけないからというのが理由らしい。
「トラファルガー先生、採血の結果出ました」
チョッパーがそう告げると、ローは血液検査の結果を凝視してから何やらエコーの器械を持って患者の元に向かう。
「どうしたんだろう?」
「この数値が上がっているからじゃないかしら?足も腫れているし、血栓の可能性を除外しておかなくてはいけないわ。
先生、エコーをするなら私にさせてください!」
ビビはローに臆することなく話しかけると、エコーの器械を握った。
「あ、ここに…」
ローとビビの読み通り、足の血管に血栓があったらしい。
(ビビはすごいな。トラファルガー先生と同じ土俵で。僕はまだまだだ…)
置いてけぼりをくらったチョッパーは再び落ち込む。どうしても優秀な同期と自分を比べてしまうのだ。