第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
焦る様子もなくぱちぱちチャンネルを替えるイルミは、堅いスーツ姿の男性キャスターが写る報道番組でリモコン操作をやめた。
『……本日夕刻にカンデル地域を中心に急速発達した超大型低気圧は時速20kmと非常にゆっくりした速度のまま依然勢力を保ち今も北上を続けています。この影響を持ち 帰宅時の交通機関に大幅な影響が出ており、鉄道各社は振替輸送を検討するも いずれも進捗は芳しくなく混乱は今夜中は続く見込みで………』
「今夜中だって。やっぱり今日は帰るの無理そうだね」
「………」
「明日の便の払い戻しきくか調べておいたら?」
「………」
「親には?この事連絡した?」
「………」
イルミは静かに目線を滑らせる。
返答のないユイを横目で伺えば、ロボットさながらに肩を怒らせたまま口を開け固まっていた。
『やん、はぁっ あ、ぁ アあっ、イくッ、イっちゃううっだめっ…イく、イく…イっちゃうーー!!』
「うわああああああっ!!!な、なんでチャンネル戻すのっ?!」
「見たかったのかと思って」
「ちが、違う!!あたしみたくない!」
「AVならミルキが沢山持ってるよ。借りてみれば?」
「いらないよ!だめだよっ!こっ こんなの見ちゃ…い、いけないんだよ!!」
ずかずか大股で近付いてくるユイは イルミの手からリモコンをひったくる。ブツンとテレビの電源をOFFにし、リモコンを投げるようにイルミの手に落とした。
まるでマラソンでもしてきたのかと聞きたくなる程、ユイは肩で大きく息をしていた。
「はあ はあ…っ」
「動揺しすぎじゃない?」
「ち、違う!!してないっ!」
「別にああいうのに興味あるのはおかしい事ではないと思うけど」
「ない!ないもん興味なんか!!最初に見てたのイル兄の方だもん!イル兄のエッチ!」
「エッチって。耳まで真っ赤になってるくせに、ユイのエッチ」
「ちがっ…違うもん!!!」
ユイは腕で顔を下手に隠したまま 数歩後ずさる。そのままイルミとは対極側の位置へ移動し 大きなベッドの枕元あたりに浅く腰を下ろした。ユイは怪訝な顔付きでイルミを睨んでいた。