第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
ユイは ふいっとその場を後にするイルミを視線で追い出し、すぐにガチャリと鍵をかけた。
その後も更に 最低3回はきちんと施錠がされていることを確認した。
ユイの入浴はまるでカラスの行水だった。
いくら浴槽が広くジェットバスまで付いていようとも、照明をいじってみればイルミネーション並みの美しいLEDが灯ろうとも、四方八方が透明な浴室ではほんの少しも落ち着けず 備え付けの散髪料やボディソープを雑に使いあっという間にその場を去ることになった。
急ぎ体を拭きバスローブを纏い 大きな鏡が備わる洗面台の前に立つ。ここでようやく少しの安堵を得る事が出来た。
本日切ったばかりの髪にドライヤーの風をぶつけながら やや印象の変わった鏡の中の自分を見つめた。
「……。」
自分で自分を客観的に見るのは難しいし、イルミの評価は曖昧、の評価はおだてを含む気がして 結局どうなのかはよくわからなかった。
「…わっ もう乾いちゃった。こんなに楽チンならもっと早く切ればよかったかなぁ」
やや癖のあるユイの髪だが、むしろそれがうまく作用し 軽やかな動きが生まれている。なんだか一つ大人になったようで 若干照れ臭くなり、ユイはふわふわしている髪を上からぎゅっと両手で撫でつけた。
「イル兄ー お風呂空いたよ~」
ほかほかした身体で元の大部屋に戻った。ベッド隅に腰掛けたままのイルミは リモコンを片手に足を組んでいる。イルミはテレビ画面に向けていた目をユイへ飛ばした。
「もう出たの?早いね」
「……ッ!!」
2人の視線が合う事はなかった。
ユイの目は上下ギリギリまで大きく開かれ、テレビ画面に張り付いていた。そこには乱れた高い声と絡み合う男女の痴情、このホテルの一室はただでさえ気まずいのに他所でやってくれと真剣に言いたくなった。
『あっアぁん…いいッ いいのぉッーああ、あっあぁ はぁっ』
「なっ、何見てるのっ…ッ!??」
「ニュースでも見ようと思って。低気圧どうなったかな」
「これ、こっ、これのどこがニュースなの?!?!」
「ああ。ラブホでは要所のチャンネルでこういうの流れてるから」