第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
「えっと ん~…パスタにしようかな、牛肉のミートソースにする」
「ふうん。買ったばかりの白い服でそんなの食べようなんていい度胸だね」
「え?!あ、そっか…ソースはねたら汚れちゃうよね」
「ユイのだから別にいいけどね」
嫌味なのか忠告なのか どちらにも聞こえるイルミの声を受け、次の候補を探してみる。
「じゃあこれ、春キャベツのペペロンチーノにしよう!これなら色もないし」
「ニンニク臭とか気にならないの?」
「え?!」
「いや 別にいいけどさ」
この後も一緒にいるわけじゃないしね、と冷めた口調でイルミは言う。
どうやら都会では食べたいものを食べるだけでも気を使わなければならないらしい。逐一ツッコミが入るのだから 何を頼んだらいいのかがわからなくなってくる。
ユイは少し頭と声を低くした。
「…イル兄決めたよ。今度こそ…」
「うん。なに?」
「1番人気の濃厚カルボナーラ、これなら問題ないでしょ?」
「結構高カロリーそうだね」
「…じゃあこれ ジェノベーゼ」
「意外と歯につくよ。歯ブラシもってきた?」
「…」
「まあいいよ何でも。ユイの好きなのにしたら?」
ならばいちいち余計なウンチクを言わずにいてくれたらいいものを。いや、むしろ、わざとなんじゃないかと思う。
勝手に店員を呼ぶイルミにユイは複雑な顔を見せた。
「ご注文は?」
「で 結局ユイは何にするの?」
「…気をつけて食べるから ミートソースが食べたい…」
「じゃあミートソースと、オレはそうだな この1番人気でいいや」
「かしこまりました」
「あとコレちょうだい」
「はい」
人に指摘をしておきながら自分は、と言いたくもなる。店員が去った後 ユイは若干むくれてイルミの顔を伺った。
「イル兄は食べるの?高カロリー。確かにイル兄はスタイルいいからそういうの気にしなくていいんだろうけど」
「オレはこれから夜通し働くからね。何か胃に入れておきたいし」
イルミは 手が空けばすぐにスマホを触り出す。声を掛けるくらいはよかろうかと ユイは控えめにイルミに言った。