第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
着信でもあったのか スマホを耳に当てながらイルミは店を出てしまう。
その頃にはユイの新しい髪型も完成に近付いていた。
「大体お終い。どうかな?」
「…なんだか変な感じ」
「可愛いでしょ?雰囲気に合わせて動きがつくようにした」
「………、」
「背筋伸ばして!笑顔笑顔!大丈夫、なんせ私が切ったんだから」
後ろからぽんぽんと肩を叩かれた。鏡の中で互いの表情を確認し合う、満足感を表情に浮かべるニナに向かって ユイはぎこちなく笑って見せた。
「さて。次ね」
「次って?」
「自信が持てる魔法をかけてあげる」
「魔法?」
「うん。折角のデートなんだしね」
ニナの口から出た単語の意味は知ってはいるが 当事者になった事はない。ユイは思い切り振り返った。
「デ、デートって?誰が?」
「イルミ君とユイちゃん。デートなんでしょ?」
「違いますよデートなんかじゃないですよ!今日は偶然あっただけで、それで、」
「ホストが同伴以外で女の子とツーショットって言うのはプライベートでのデートだよ」
「え?!ええと、その辺はよくわかりませんけど、その」
「動かないで。前向いてじっとしててね」
ふふふと笑うニナの手の中には いつの間にか化粧箱が用意されていた。顔を寄せてくるニナからは女性らしい良い香りがした。
「お肌は綺麗だからそのままでいいかなー いいねえ若いって。眉整えてマスカラとグロスだけでもだいぶ印象変わるよ」
「お、お化粧なんて、なんかっ…」
「楽しみにしててねー♪」
「ニナさんっ 近い!怖い!コワイです!!」
「まばたき禁止」
「無理ですっ!!」
「イルミ君の反応が楽しみだね」
「コワイですっ なんかそれもコワイです!」
ユイの焦る声はサロン店内に虚しく消えていった。