第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
「ごめんねユイちゃん 暴走して。じゃあ寝坊した朝も10秒で束ねられる長さがあればいいかな?」
「はい。だと安心です…」
「んー、セミロングくらいまで落として 癖がいかせるように裾は軽めにすこうかな。サイドはこの辺からレイヤーつけたら動きが出ていいかも。どうかな?」
「?? とりあえず束ねられればいいのであとはお任せで」
「バングスももうちょい重く取ってトップもボリューム出やすいようにハサミいれて、あとは全体印象軽くするくらいに色入れれば、」
「あ、カラーは却下。時間かかるし」
「ええ~~~?!」
イルミの声に一喜一憂するニナに心で礼を言ってみる。
過去にここまでサロン店員と会話をしながら髪型を決めたことはないのに、ニナはこんなにも一生懸命になってくれるのだから こそばゆくなる。
サクリサクリと豪快に切られてゆく髪を見ながら、ちょっとの不安と期待を胸に 鏡の中の自分を見張った。
「ユイちゃんは髪が綺麗だねー」
「え?!」
初めて言われる言葉だった。自分では少しもそうは思えないが プロに言われるとお世辞でも嬉しいものはある。
「健康ないい髪してる。ホストやキャバの髪ばっか触ってるとホント見事に傷んでて可哀想になってくるから」
「そうなんですか?」
「うん」
見た目には綺麗の一言に尽きるが そこにはイルミも含まれるのだろうか。少し気になりニナの顔を伺った。ニナはすぐにそれを組み、イルミに声を飛ばした。
「でもイルミ君はかなり優秀だよね。不規則生活な上にそれだけ伸ばしてるのに」
「どうも」
「いつか切りたくなったら絶対私に切らせてよねー」
「いつか切りたくなったらね」
「ホント?予約ね」
「オレの髪を担保に今日の代金はうまくクロロの店の経費に付けといてよ」
「いいよー ばれた時の責任は負わないけど」
ニナはあっけらかんとして 笑っていた。