第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
ユイは大きな鏡の前に座らされた。
後ろにはニナが立ち、鏡に映る位置に 足を組みながら携帯電話を触るイルミの姿も見える。
束ねた髪が解かれる。記憶にあるだけでも数ヶ月は美容院へ行っていないので 背に届く長さになる髪はわさわさ伸び放題だった。
「ん~どうしようかなあ」
様々な角度からユイの髪を触るニナの顔を伺った。先程までの砕けた表情と変わり 真剣な顔付きでカット方法を模索していた。
「顎ラインまでバッサリいっちゃおうか。ガーリーボブ、雰囲気に似合いそう」
「ぼぶ……?」
「ええとね こう裾のラインを揃えた髪型でね、」
名前は聞いたことはあるのだが 名称と実際の形が一致しない。ニナは丁寧に説明してくれるが わかるようではっきりはわからなかった。少し難しい顔をしていると イルミが口を挟んできた。
「簡単に言うとカルトみたいな感じ」
「え?!カルトちゃんヘア?!私絶対微妙なジャポン人形みたいになるじゃん!!」
ニナは楽し気に笑っていた。
「よく似合うと思うよ。だいぶ軽くなるしイメチェンになるし」
「私癖っ毛だし!カルトちゃんみたいにサラサラじゃないから短くなると朝は寝癖で爆発しちゃうよ!」
「朝のブローもコツ覚えれば簡単だよ。教えてあげるから大丈夫!コテ持ってる?なかったらそこの荒稼ぎしてるお兄ちゃんにおねだりして買ってもらってね」
「いや、無理無理ムリですっ!朝はいつもバタバタで朝食食べる時間もないくらいなのに髪に時間かけられない!」
「コラコラ~女のコはオシャレへの時間を惜しんじゃダメだぞ?」
「でも…、」
済ました顔でスマホをいじっているようでしっかり会話は聞いているイルミの声が 度々飛び込んできた。
「ニナ、ユイはまだ学生だし勉強優先の身だからさ。本人の意向でやってやってよ」
「え~絶っ対ボブが似合うのに…」
「客の要望聞かなくてどうすんの」
「提案するのも大事な仕事なんだけどなぁ…」
肩を落としつつも ニナは再びユイの顔を覗いてきた。