第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
「ええと、あたしはイル兄の、その……」
喫茶店での事を思い出し なんと自己紹介するかを迷ってしまう、ついもごもご口ごもった。ニナはキョトンと眉を上げていた。
「…イル兄だって。あのクールキャラで売ってるイルミ君が妹ちゃんにはイル兄なんて呼ばれてるんだ」
「え?クールキャラで売ってるなんてオレ言ったっけ?」
「シャルの戦略マップでは多分だけどそう位置付けされてるよ」
「そもそもオレがヘルプ要員だって事忘れてるよねアイツら」
「そんなイルミ君でも妹ちゃんの前ではシスコンのお兄ちゃんになるのかー」
「妹はいないよ。ユイは同郷出身の幼馴染」
テンポよく流れる会話を聞きながら ユイはパチパチまばたきをした。イルミの口からさらりと出た“幼馴染”の表現がじんわり嬉しくなる。
ノリツッコミめいた会話を繰り返した後、ニナはユイに視線を合わせてきた。
「よろしくねユイちゃん。私は幻影旅団の、ええと…イルミ君が粉骨砕身して働いてるホストクラブの専属美容師させてもらってるの」
「そうなんですね。よろしくお願いします」
「今日は任せてね。イル兄がメロメロになるくらい可愛くしてあげるから」
「めろめろ…っ?!」
ユイはつい声を大きくする。
少しの間を置いた後、イルミがツッコミを入れてきた。
「ニナさ、メロメロって今時言う?死語じゃないの?」
「そんな事ないよ ねえ?ユイちゃん」
「え、どうだろ、わかんないけど、…使わなくはない気もするようなしないような…」
どちらの肩を持つでもなく曖昧に返したつもりだったが ニナはにんまり勝ち誇った顔をしていた。
「ホラ、1番若者が言ってるんだからまだ生きてるんだよ」
「ユイはその辺疎いよ」
「いいの!さ、ユイちゃんはこっち来て。イル兄はその辺で待ってて」
「やめてくれる?その呼び方」
ユイにとっては当たり前の愛称が 少しだけ可愛く思えた。