第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
アパレル店を出るなりどこかへ電話をかけるイルミの後に ユイは足早でついて行った。何やら展開が急で さすがに頭が着いていかなかった。
「イル兄!待ってよ!」
「早くおいで」
人並みを器用によけ さくさく歩くイルミを呼び止めれば、イルミはひょこっと振り返る。急いで近づくとまた先へ進んでしまう、仕方なくまた必死に追いかける。
アンバランスな男女のイタチごっこは傍目には面白いのか 一部の通行人の目を引いていた。
「イル兄歩くの早すぎ…こんな人いるのによく歩けるね…」
「慣れだよ」
「うう~脚がスースーする…気になって余計に早く歩けない…」
「もう着くから」
10分弱程歩いた先には スタイリッシュな雰囲気漂うサロンがあった。整髪剤なのかシャンプーなのかふんわりいい香りが漂ってくる。
さすがに次の予想が立つ、ユイの口は数十分前と全く同じようにだらんと開かれていた。
「イル兄ここって…」
「レストランにでも見える?ほら行くよ」
ユイはまた気後れしながらも、イルミの後に続くしかなかった。
「ニナ」
「あ~!旅団のヘルプ要員でありながら今ではすっかりレギュラー陣のイルミ君だ」
「勘弁してよ。電話通り時間あけておいてくれた?」
「もちろん」
これまた随分馴れ馴れしい態度でイルミと話すサロン店員を ユイはちらちら観察した。個性的な服装や髪型はいかにも美容師らしいが、容姿端麗な女性であった。店を見渡せば男性にしろ女性にしろ 雑誌に出ていてもおかしくないレベルの魅力的な人間ばかりに見えた。
ニナと名乗るサロン店員はイルミに近寄ると、両手を黒髪にするりと伸ばす。細い指に髪を絡める様が ラブシーンの一コマのようで凝視出来ず ユイはぱっと派手に視線をそらせた。
「いよいよ私に髪を切らせてくれる気になってくれた?」
「それは追い追いね。今日の客はオレじゃないよ」
「とするとそっちの彼女ね。イルミ君のお客様…じゃないよね?」
後ろにいるユイにニナの視線が移る。急に会話に引き込まれ ユイは目を泳がせながらイルミとニナの顔を伺っていた。