第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
「着れた?開けるよ」
「え?!だめ!まだ!着れてません!」
「ユイって着痩せする方?フリーサイズじゃ着れないの?」
「違うの!そうじゃなくて!」
カーテン越しに届くイルミの声に 焦った返事を返し、複雑な気持ちのまま自分の服を脱いでいった。
「………………イルにぃ」
試着を終えカーテンから顔だけをちょこんと出しイルミを呼べば、イルミはいつの間にか 先程の店員と何やら仲良く話している。女と見ればアクションに出るのは職業病なのか実際ただのタラシなのか、そんなことを頭の中で指摘した。
「着れたの?」
カーテンをがばっと全開にされ全身像を見せることになる。
「…………っ、」
ついに公開処刑の時間である、ユイは顔を真下に向け イルミの黒靴の先を見ていた。
「うーん なんか違うな」
「…」
「着丈?サイズ?肩幅かな?」
「…」
だから言ったのに、との言葉を喉の奥に押し込めた。似合わない着せ替えごっこはもう十分だろう、ユイは小声で頼むしかなかった。
「イル兄…も、脱いでいい…?」
「あ わかった」
「え」
「後ろ向いて」
肩を片手で返され背中の中程で止まったままのファスナーにイルミの手が伸びる。
ユイはさっと目を見開く、物理的にどう留めたらいいのかよくわからず途中であったのは事実だが さすがにそれはどうかと思う。
試着室内の全身鏡には肩ラインがややだらんとしたままの服を着た 自分が映っていた。
「え?!ええっ?!」
「上げるだけ」
目のやり場もわからず見たくもない鏡を覗くしかない。イルミと自分の身長差やモノクロのコントラストがやたら強調されて見え、思わず鏡に両手をついた。
一つに束ねた背にかかる髪をイルミの手により肩に流される、背中にゆっくりファスナーが流れる感触がある。ユイは顔を強張らせたまま ぎゅっと目を閉じた。
「そんなに構えられてもな。上げるだけだってば」
「…っ」
たった数秒が異様に長く感じられた。
「出来た。どう?」
「サイズもぴったりですね お似合いですよ」
2人のやりとりを可愛い声で笑いながら女性店員が明るく言う。そっと目を開けば 複雑な顔をした自分と見つめ合うことになる。