第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
イルミに連れて来られたのはこれまた先程の喫茶店から遠くない場所にある アパレル店舗が揃う大きなデパートの中だった。
ユイはゴクリと固唾を飲む。
目の前にでかでかと飛び込んでくるのは 着飾ることに興味のないユイですら知っている有名ブランドのショップロゴ、友人が騒いでいたりTVで見たこともある。若手モデル御用達の人気店だった。
可愛らしい洋服を軽やかに纏ったマネキンが数体並ぶ店の前で ユイはだらしなく口を開けていた。
「ロリポップ‘クライシス…さすが都会…ホントにお店があるなんて…」
「20時っていうとまだ時間あるし せめて服装だけでも何とかしなよ。このままだとまたさっきみたいなのにカモられそうだし」
「うわ…店員さんまでみんなマネキンみたい…細!可愛い!…」
「だって店員が自社ブランドの服着こなせてなかったら商品アピールにならないよね」
当たり前の突っ込みを入れた後、イルミは躊躇なく明るい店舗に入って行く。女であるユイの方が ぎこちなく後ろに続いて行った。
「わあ…お洋服どれも可愛い」
「系統とか好みある?」
「わかんないよ。こんな可愛い洋服着たことないし…」
「ならオレが選ぶよ」
「うわあ靴まで可愛い…あ、あれも可愛い!アクセサリーまで売ってる 可愛い!」
「いつも思うけど女のコの形容詞ってなんで可愛いしかないの?」
この店内はユイにとっては お伽話の世界のよう、ずいぶん大袈裟な景色に見えた。普段であれば例え店が目の前にあっても恐れ多くて足を踏み入れる事すら出来ないだろう。
「わあー……」
ふわふわした感覚に包まれ 逐一感嘆の息を漏らしながらユイは視線を泳がせていた。
「見て見て あの背の高い人カッコよくない?」
「あ、ホントだ!芸能人みたい」
隣から聞こえる浮ついたヒソヒソ声にユイは横目を向ける。店内にいる客は若い女性を主に 1部男女のペア、彼女らの評価の矛先がこの場で一際目を引くイルミであるのは確かだった。盗み聞くつもりはないが、ついつい耳をそばだててしまう。
「何探してるのかな、彼女にプレゼントなのかなあ」
「えーいいなあ彼女!絶対カワイイ子だよね」
「…」