第4章 +アルファ/夢主はイルミの幼馴染
良くも悪くも イルミの物事をはっきり判断する所は健在だった。問い掛けたのは自分だが ありのままを言われるとさすがにグサリと言葉が刺さる。眉の下がる顔を隠すようにユイは既に空になったカップを無意味に口へ運んだ。
「何よりまずは雰囲気だよね。キョロキョロおどおどしてる割に他人を皆いい人だと信用しますみたいな目をしてるあたりが特に」
「…そうかな」
「うん。あと服装とか」
「…服か」
「キャッチかける時の基本だからね、女のコの全身バランス見るの」
「…そうなんだ」
「スカウトされるとかお世辞にもあり得ないよ。さっきのオレが止めなかったら今頃いかがわしい写真撮られてるか変な美容サプリでも買わされてるのがオチだよ」
「え、そうなの?!」
「常識で考えてそうだろ」
「…それが都会の常識なの?」
「全部とは言わないけど高確率で。蹴落としたり騙したりする事を企む人間はユイが思ってるよりも山程いるってこと」
「…………」
夢を追いかけて生きてきたので そんな世界にもお洒落にもそこまで興味がなかったのは事実であるが、信用出来る知り合いに現実を突き付けられると さすがに落ち込んでしまう。
下唇を噛み締めながら黙っていると イルミが先に席を立った。
「行こうか」
「どこに?」
「帰りの飛行機は20時って言ってたよね?まだ時間あるしさ」
「でもイル兄はこれから仕事なんでしょ?」
「だからまだ時間あるから。ほら早く」
そもそも何故そんな夜の便を予約したのか、やることが終れば早く帰ればいいものを、そんな事を言いながらイルミは伝票を片手に取ると 先にレジへ向かって行った。