第3章 今日も夜が来る/小話集め
13.留守電メッセージ/イルミ
『新しいメッセージが一件……』
聞こえてくるのはお決まりの機械音声だ。同伴時、客とカウンター席に並び飲んでいたら 携帯電話がそう告げた。電話主からは既に 着信もメールも数え切れない程だったので別に驚きはしなかった。
「…大事なお客さん…?」
「まあね」
隣のコにはそう返し 予想通りのメッセージを確認する。
『……ねえ どうして電話出ないの?意味わかんない 私こんなに辛いのに苦しいのにイルミは何もわかってないよね もう死にたいの本気なの だから今ね、病院でもらったお薬1ヶ月分全部飲んだの。 これでようやく私ちゃんと死ねるんだね こうなったの全部イルミのせいだから。人殺し 死んでも許してやらないから』
頬杖をつきながら メッセージを削除する。そして隣であからさまにしゅんと肩を落としているコに話し掛けた。
「知ってる?」
「…なにを?」
「薬100錠飲んだって人間て死なないんだよ」