第3章 今日も夜が来る/小話集め
12.思い出の品/クロロ
「客に貰った品をどうしてる?」
営業後の酒臭い控え室。クロロは胸ポケットから取り出した小箱をテーブルに置いた。
「オレは基本ネットオークション」
「シャルらしいな」
部屋に残るのは、業務処理をこなすシャルナークのパソコン操作の音だけだった。
「……因みに、思い出の品はどうしてる?」
「何それ。貢物に思い出も何もある訳ないじゃん」
ここでもまた 実にシャルナークらしい回答だと思う。クロロは自嘲気味に例の小箱を見つめていた。
「一期一会、と言うのか?今日と同じ時間は2度とこないというのに」
「もう営業トークの時間は終わったよー」
「……だったな」
その声を受けた後、クロロは小箱に愛おしそうにキスをする。そして指先から放たれた箱は放物線を画き、そのままゴミ箱へ落ちた。