第3章 今日も夜が来る/小話集め
6.借りた傘/月餅
本日の業務が終了した後 いつものメンツで飲みに行こう、なんて流れになった。いつの間にか外は大雨になっていた。
「最悪ね ワタシ濡れるの嫌いよ」
「フェイ頭コケシになんしな」
「そう言うオマエは眉メイクとれてますます悪人ヅラね」
「人の事言えんのかァ?」
疲れ任せにどうでもいい会話が続く。灯りの減ったネオン街は 雨のせいでますます視界が悪かった。シャルナークが声を張る。
「よしっ 隣のテナントから傘借りるか」
「借りるってか盗るだろ」
フィンクスはしけた煙草に火を付ける。
「2本しかねーな」
「問題ないね。シャルは傘 必要ないよ」
「だな 濡れても変化点ねえし」
「ちょっと待てよ。オレの発案なんだけど」
ここはフェアにコインで決める?と提案した時には既に遅し。薄情な2人組はビニール傘の下を歩き出していた。