第2章 同業者/夢主は元お客様
「シャンパン入れてー?」
「いいよ。何?」
「じゃあ、コレ」
「どうぞ」
「わぁい ありがとう。……イルミ好き」
リオンはころっと品良く微笑む。
イルミはその細い肩に片手を添え そっと引き寄せてみる、今度はこちらが誘う声を出す。
「ねぇ」
「んー?……」
「次はいつ店来てくれる?」
「…もぅ 営業上手だな イルミは」
「リオン程じゃないよ」
小さな気泡が弾ける薄いピンク色の酒が運ばれる。
向かいに座るのはリオンの同僚のルナだ、ぷるんとした唇を尖らせ ルナはヒソカを見上げた。
「もしかして、……ヒソカもいるの?本カノ」
「お客様はみんな本カノ♡」
ヒソカは足を組み 嬢の肩を抱く。そして横から彼女へ顔を寄せ 切れ長の瞳を甘えるように細めて見せた。
ルナは手元のポーチからタバコを一本取り出すと、両手でそれをヒソカの口へ運び 慣れた様子でライターに火を灯す。
細い煙を吐き出した後、ヒソカは頬を緩めた。
「恋させるのがオシゴトなんだからみんな本命。 当然だろ?」
「ん〜、じゃあその中で一番は?」
「寄ってくるコは大勢いるけど、ボクがわざわざ会いにくるのはルナだけ」
「ホントに?」
「あ、騙されない方がいいよ。この前ヒソカ、女の価値は“いかに金を捻出出来る素質があるか”だって言ってたし」
「え~ やだー何それーっ!」
「おいイルミ バラすなよ」
焦る様子もなく言うヒソカの横で ルナはツンと拗ねたフリをする。宥めるように ヒソカはルナの腰を引き 首筋に顔を寄せ 低い声を出す。
「嘘も方便。このギョーカイの人間ならわかるだろ?」
「私にだけ会いに来るっていうのと、女はお金だっていうのと、どっちが嘘?」
「当然後者」
「嘘っぽいっ」
キャイキャイ言いながらルナはヒソカの鼻筋を指先で撫でている。
いつの間にか イルミの視界を遮るように、目の前にタバコが差し出されていた。
「イルミも吸う?」
「ん」
タバコを咥える。イルミはそれを一旦口から離し 隣に座る女に問い掛けた。
「じゃあリオンは男の価値ってなんだと思う?」
リオンはクスクス笑みを見せる、輝く蠱惑的な瞳は 向かいのヒソカに飛んでいた。