第1章 ホスト遊び/夢主はお客様
「お返し頂戴。プレゼントの」
「え、…な、何?」
リネルさんもヒソカにプレゼントあげてたし、また会う口実にもなるし そんな高い物じゃなければあげてもいいかな、なんて思った。
私の思考をかき消すように迫るのは影だった。
イルミは一気に顔を近付けてくる。
唇が触れそうなくらいに。
イルミの言う“お返し”が何かわかって、私の心臓は苦しくて嬉しくて破裂しそうだった。
「ユイのキスがいい」
「……っ……」
「くれないの?」
少し首を傾げるイルミに、私は背伸びをして、生まれて初めて自分から男の人にキスをした。
キスってこんなに嬉しくて幸せなものだと思った事なかった。
触れる程度のキスの後、イルミは私の両頬を包むと少し目を細めて言った。
「足りないよ。ユイ」
「………、っ」
「ユイはこれで満足?」
ほんとにズルイよねイルミは。
私が何を思っているのかを知っていてそういう事を言うんだから。
「…っ満足じゃない…」
「うん。知ってる」
逃げ腰になればそんな私を捕まえるみたいに。
背中はエレベーターの壁まで追いやられて、四方は両腕で囲われて。
そのまま地上にエレベーターがつくまでの間、私達は貪り合うようなキスをした。
お姫様は王子様にキスされて悪い魔法から覚めるんだっけ。
私はお姫様じゃないし相手も王子様じゃない。
きっとここで私は簡単には解けない悪い魔法にかけられたんだと思う。
そこから少しづつ、真面目に生きてきたはずの私の人生が狂い始めた。
fin