第1章 ホスト遊び/夢主はお客様
「今夜はお終いだね」
「…うん」
「寂しい?」
「…少し」
自然に言えた。
イルミの側だと私って素直になれるんだって思った。
イルミは私をあやすように頭を何度か撫でてくれる。
エレベーターに乗り込むと、イルミが地上行きのボタンを押して、扉が閉まる。
地上についたらいよいよサヨナラだ。
せっかくこうして最後の最後に会えたのに。
まだ聞きたい事も知りたい事もたくさんあるはずなのに。
なんだか胸がいっぱいで、何を言ったらいいのかもよくわからなかった。
エレベーターが動き出す。
イルミが一歩私に近寄り、私の正面に立ってくる。
座ってたからわからなかったけど、こうしてみると随分背が高いんだなって思った。
イルミは少しだけ、身体を屈めて言った。
「ユイが寂しくないようにプレゼントあげる」
「え…?」
私の目の前に差し出されたのはさっきももらった名刺だった。
どうして二枚も?
私はふと首を傾げた。
「プレゼントは裏」
くるんと裏返すと 電話番号とメールアドレスが書いてあった。
「これは私用携帯。寂しくなったらユイならいつでも連絡してきていいよ。表の営業用の方でもいいけど、こっちの方がいいでしょ」
「…、…うん」
「これはさすがに誰にでも教える訳じゃないから、取扱いには注意してね」
「…わかった」
そっか…
電話したりメールしたりしていいんだ。
私ってば今この瞬間の事しか考えてなかった。
携帯にイルミの連絡先が入っていると思うだけで毎日頑張れるような気がしてきた。
そこで繋がっていられるような、そんな感じがして。
私用携帯って言うのは嘘か本当かわからないけど。
もういい、全部信じる事にする。
イルミは私の肩に手を置いてきた。