第1章 ホスト遊び/夢主はお客様
イルミは一瞬だけ私と目線を合わせると、私を静かに抱き締めてきた。
ちゃんとイルミの匂いがした。
「なんて顔してんの。ユイ 可愛すぎ」
「……、……」
「オレもユイに会いたかったよ。ユイの側が一番落ち着くし安心する」
たったこれだけで。
イルミの腕に包まれてそう言われただけで、嫉妬にかられていた感情が麻痺したみたいになくなった。
イルミの言葉には何か不思議な力があるんじゃないかと思った。
私だってイルミの側が一番落ち着くし安心するんだよ。
こうやって側にいるときはイルミは私を見てくれる。
その時だけはイルミは私のものになる。
もうそれだけでいいかな…なんて思えてきた。
考えるのも答えを出すのも面倒くさい。
こうしていられればそれでいいやって。
イルミの腕の中で目を閉じると、リネルさんとヒソカの声がやたら遠くに聞こえてきた。
席で過ごす時間はあっという間で、殆ど会話をすることもなく抱き締められたままに終わってしまった。
先にリネルさんとヒソカが席を立ち、後から私達も席を立った。
お店の入り口を出ると、店内よりは少しだけ明るいエレベーターホールに辿り着く。
私は心の隅で気になっていたことを聞いた。
「あの、…お会計は?」
「ああ 今日はリネル持ちだって。いい先輩持ったね」
「……そう」
結構飲んだし何人もホストが席についてくれたし、かなり高額になったんじゃないかな。
さすがにリネルさんに少しはお金払わなきゃって思った。
でも今は余計な事は考えないようにイルミを見上げた。
薄暗い所で見てもカッコ良かったけど、明るい所で見てもやっぱりカッコいい…というか個性的な雰囲気があって綺麗な人だなと思った。
イルミは私を見下ろしてくる。