第1章 ホスト遊び/夢主はお客様
右手首を取られイルミにマカロンを手渡された。
「はい。3択出して」
「…え?えと、…」
「早くしないとオレが決めるよ?」
焦って必死に3択を決めた。
あの時は私、結構頭が働いたと思う。
「えっと、…1 右手、2 左手……あと、両手!」
私の3択が意外だったのかイルミは少し目を見開くと、私の右手首を優しく掴んだ。
「じゃあ1」
そう言うと割とあっさり口先でマカロンを咥えていった。
マカロンを口に隠すなりイルミは眉間に少しシワを寄せて怪訝そうな顔をした。
「なにこれ」
「なにって、…マカロン?」
「オレ初めて食べたけど、甘過ぎ」
今まで殆ど変わらなかった表情を崩した瞬間が なんだか可愛く見えてしまった。
イルミは片手を口元にあてながらマカロンをお酒で流し込んでいる。
女性はマカロンが好きな人多いだろうし もしかしたらイルミは私よりも食べ慣れていそうなのに。
さっきのが初めての一つ目だったとしたらそれはなんだか嬉しかった。
イルミは手にしていたお酒をそのまま私の目の前に持ってくる。
「これでもやってみる?3択」
「え?…や、いい…」
先の展開を予想してそう答えた。
イルミはさっとお酒を引っ込めた。
「このゲームは個体より液体の方が面白い。飲み会とかでも使えるよ」
「飲み会なんて、行かないよ…そんなの…」
つい真面目に答えてしまった。
イルミはまたも 目を少し見開いて言った。
「面白いね。ユイって」
「え、……どこが、」
真面目真面目で生きてきたから面白いなんて言われたのは初めてだった。
褒め言葉なのかどうなのかよくわからなかったけど、初めて言われた言葉だしなんだか恥ずかしくなった。
私はそれを誤魔化すように、自分のグラスを掴むと豪快にそれを飲んだ。