第6章 大人になる方法/イルミ/+アルファ夢主初体験裏
“イル兄は脱いでるし” その言葉はゴクリと唾を飲んだせいか喉元で止まってしまった。
最初から全部を脱ぎ去る気はなかったのか、足を組む動作を最後に イルミの動きがストップする。
「まあ脱いでもいいんだけど いきなり全裸っていうのもなんかね」
「じゃあなんで脱いでるの?イル兄は……」
「脱いでるワケじゃなくて、なんていうか 準備みたいなもの」
「準備?」
儀式的なものなのだろうか。よくわからなくてユイは少しだけ首を傾げた。
「セックス中 いざ脱ぎますって時に もたもたしてるとしらけるし」
「……え……っ」
「言うべきじゃないかこんな事。今のはオレが悪かった」
ダイレクトな言葉には顔も思考も思い切り固まった。質問したのはこちらであるし 謝罪をもらった所で責めるべきかもわからないのが本当の所だった。イルミの視線がユイを捉える。
「せっかくだしユイも準備しておく?手伝ってあげようか」
「え?!えっと なら私は ど、どこ準備すればいい?」
「冗談だよ。いいよユイは そのままで」
「………」
「後でちゃんと脱がせてあげるから」
固まっていたから気づかなかったが 自然と手首を引かれていた。いつ握られたのかすらよくわからないのに 答えを模索する間もないくらい、あっという間に膝の上に座らされた。
それでもイルミの顔を見る余裕なんかなくユイは下を向いたまま。きっと頬は胸の動悸のせいで真っ赤だ。
「緊張する?」
「する…っ」
「それはそうだよね」
変な角度から聴こえる声が いつもより柔らかい気がする。
抱き締める とは違うし、ただ単純に椅子の代わり とも違う。そっと身体を覆う腕が邪魔をして逃げたくても逃げられなかった。第一 ここまで密着するのは初めてに等しいわけで イルミの体温も腕の感触も、今では慣れたはずの香水の香りも あまりにもリアルだった。
頭の上にそっとイルミの顎が乗る。そんな場所で話されると 後頭部に妙な振動が駆けてゆく。意味なくそれを辿ってみる。
「実はオレも少し緊張する」
「えっ ウソ?!なんで」
「だってユイは客ともプロとも違うし」
「………」
「夜のコとも恋人とも違う」
「………」
「ホントにオレでいいの?とも思うし」
「ッ あたしは……っ!」