第5章 square/夢主2人/キャバ嬢/裏
「………私が付けてあげる」
ルナはそう言い身体を起こす、片手で薄いゴムを押さえた。
イルミに顔を近づけ 一度だけ甘く口付けをする。愛らしい吐息を漏らせばイルミもそれに応えてくれる。
優しく丁寧に求め合う、互いの口内を楽しむキスはもちろん 刹那な恋人の真似事だ。
そのまま頭を下まで落とし、唇でゴムを押さえ直した。
「付けると言ったらちゃんと付けるのに。用心深いね ルナは」
「…………」
こちらの思惑はお見通しだったようだ。
うまくカムフラージュしたつもりだったが甘美な擬似事には少しも引っかからないあたり相手はやはり同業者、イルミの声は冷淡で 暇潰しの時間を再認識させられる。
唇と舌を使ってうまく下まではめ込めば、人工物の匂いと食感が口内に充満する。
「…………」
イルミのモノをゴム越しに咥えながらも 先程より聞こえっぱなしな不可解な音が耳障りだった。無意識にもそこへ耳が反応してしまう。
それは浴室の方から。
何かが落ちるような、壁を叩くような、高い女の喘ぎも混ざっている気がする。普通に“入浴”だけしているならばまずそんな音は出ない筈だ。音源は当然、自分達以外の2人だけである。
「よくわかんないけど盛り上がり過ぎだよね アイツ等」
ちらりと上を伺えば、イルミの目も部屋の一角に向いていた。
本当にどこまでも不愉快だ、こんな時にまで 頭の中に入ってこないで欲しい。
ギリギリと、ルナの歯先に勝手な力が入る。