第7章 揺れるびいどろ、恋ノ花模様 * 織田信長
「信長様は、本当に……」
すると、美依は何だか悔しそうな顔をして、言葉を濁す。
そしてしがみつく腕に力を込め…
胸元に顔を埋めながら、なんだかか細い声を上げた。
「もう、責任取ってください」
「責任とは?」
「貴方が触れるから、熱くなっちゃったじゃないですか」
「……」
「中途半端に触れられると辛いです、だから…もっと触れてください。でも、不機嫌にさせて…ごめんなさい」
(本当に…貴様は、愛らしい女だ)
きらきらと表情が変わり、眩しくて可愛くて。
顔を埋める美依の髪に挿さったびいどろの簪を見て、『これだ』と気がついた。
七色に様変わりする貴様は、びいどろに似ているのだと。
初めてびいどろを見た時の感情。
光を集め、光の具合で色が変わって。
この世にはこのように美しいものがあるのかと、酷く惹かれたのを思い出す。
貴様は、そんなびいどろに似ている。
ころころ表情が変わり、愛らしくも艶っぽくもなる。
そして───………
俺の心を惹き付けるのだと。
「ここでは全てには触れられんな、少し我慢しろ」
「はい……」
「近くに宿を取るか、責任を取ってやる」
「っ……」
「だが、とりあえず今は……」
────もう少しだけ、唇を寄越せ
ゆらり、揺れるびいどろに映る、
それは、恋の花模様なのか。
甘ったるい感情と、
焦れるえげつない心と、
映して煌めき、花柄を描いて。
そして、また溺愛していく。
貴様に、溺れて───………
また知らない己の変化に気がつく。
美依を掻き抱き、重なった唇からは、今度こそ愛しい者の甘さを感じた気がした。
紅よりも、林檎飴よりも強く甘い。
たくさんの想いも重なり合って…
目の前がくらくらするほどに、酔いしれる。
夏の暑さと、火照りだした身体。
相乗して、まるで火の中で焦げるような感覚まで覚えながら、俺達は口づけに溺れていった。
びいどろの簪が、煌りと光って───………
秘密の逢瀬はまだまだ終わらないのだと、激しい熱情まで模様になって映し出された気がした。
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