第24章 あの子を射止めろ!恋して蜜薬《前編》* 徳川家康
「美依のすぐ横の薬品棚に、水飴あるから舐めなよ。蜂蜜入ってるから、少しは良くなるかも」
「お言葉に甘えてそうさせてもらおうかな」
「自分で取れる?一番上の右端にあるから」
「解った、ありがとう」
行燈のほのかな灯りに、美依の笑顔が浮かぶ。
美依はそのまま立ち上がって、薬品棚を開けた。
その後ろ姿を見ながら、俺はまた落ち着かない気分になる。
……寝間着って、妙に色っぽいな。
ゆらゆらと揺らめいて見えるせいだろうか。
薄い寝間着は美依の体の輪郭をはっきり映し出し、腰紐一本で結ばれているのが、やたら頼りない。
(っ……変な事を考えるな、自制心)
一旦美依から目を離し、少し深呼吸をして己を律する。
自分でも思った以上に、頭が沸いてるな。
少し冷やさないと駄目かもしれない。
そう思った時……俺はある事を思い立って目を見開いた。
─────俺、さっき……
例の"惚れ薬"、一番上の端に置かなかった?
「っ……美依!」
「ん……?」
……ごくっ
美依が飲み込んだ音。
手には、小さな壺と匙。
その壺は、正しく………
─────『究極の惚れ薬』
本当に馬鹿、俺は大馬鹿だ。
揉め事の種を自らで撒き、水を注いだ。
何故、もっと注意しなかったのだろう。
それもこれも、頭が湧いてたせいだ。
美依が隣にいたから……
思考回路がいつも以上に鈍っていたんだ。
打ち付ける雨音がする。
それ以上に駆ける心音も……
うるさく体中に響いていく。
それが、大騒動の始まりだった。
武将達を巻き込み、美依も巻き込んだ、
俺の片恋慕に火をつける、そんな珍騒動の。
あの子を射止めろ!恋して蜜薬《前編》
ー了ー
*.☪︎ ┈┈┈┈┈次回予告┈┈┈┈┈☪︎.*
『っ……絶対にさせない!』
惚れ薬を飲んだ美依。
最初に目に映すのは誰なのか。
そもそも惚れ薬は本物なのか?
片恋慕にも決着が着く刹那。
『うん、本当だったかも』
美依を巡った、ドタバタ大騒動。
─────ここに開幕。
次章>>>>
あの子を射止めろ!恋して蜜薬《後編》