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【イケメン戦国】新篇 燃ゆる華恋の乱☪︎華蝶月伝

第6章 エゴイズムな純情戀歌《後編》* 豊臣秀吉







────温かい、お前はすごく
酷く満たされて…泣きたくなる程だ






「……秀吉様、申し訳ありません」




女中の声が聞こえ、俺は意識を浮上させた。
瞳を開けてみれば、部屋の中はすでに明るい。
そして再度襖の向こうから『秀吉様、起きていらっしゃいますか?』と声が聞こえてきた。

そうか、美依を抱いて…
俺もそのまま眠ってしまったのだと。
胸にひっついて穏やかに寝息を立てる美依の温もりを感じながら、俺は笑みを漏らした。

美依はまだよく眠っているな。
それを確認してから、一回額に口づけを落とし…
そして、起こさないようになるだけ小さな声で、俺は女中に返事をする。




「悪い、今起きた。どうした?」

「あの、家康様がお見えになりまして」

「……家康が?」

「お通しするか迷ったのですが、そのっ…火急の用件だと申されまして…えぇと、いかがなさいますか…?」




(……全て察してますって感じだな)

女中の遠慮がちの言葉に、俺は苦笑してしまった。
まぁ、昨日美依は湯浴みをすると部屋を飛び出して行って、何故か戻ってきたんだよな。

……まさか自慰していたのまで、知られてしまったのは恥ずかしかったが。

それでもその後想いを通わせたから…
まあ、女中からしたら美依は結局湯殿に行かなかった訳だから、色々勘ぐって察するよなとは思う。

それにしても、家康の用件とはなんだろう。
俺は再度美依の額に口づけをし、そっと褥から起き出した。
そして、脱ぎ捨てた着物を簡単に纏い…
襖を開けてみれば、女中の横には呆れ顔をした家康の姿があった。




「家康…火急の用件って何かあったのか?」

「秀吉さん、もう昼なんですけど」

「え」

「仕事人間のあんたが、何も言わずに登城しなければ心配もしますよ」

「あ…悪い、色々あってな」




まずい、もう昼になっていたのか。
部屋が明るいのは当たり前だ、朝を通り越してしまって気がつかなかったのは一生の不覚。
俺が廊下に出て後ろ手で襖を閉めると、家康は俺をじとっとした目で見てきて。

そして、小さく息をつくと…
相変わらずの冷めたような口調で言った。






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