第6章 エゴイズムな純情戀歌《後編》* 豊臣秀吉
「んっ……」
息をつめ、それを扱いていけば、直接的な刺激に自らの雄は直ぐに首をもたげ始める。
秀吉は頭の中に好きな女をひたすらに思い浮かべ、自分を慰める行為に浸っていった。
部屋の中には甘い吐息が混じって…
染まり始めた空気は、あっという間に色濃くなっていったのだった。
*****
「やらかした…情けない」
絶叫しながら走って湯殿に向かった私。
湯浴みの準備なんて全くせずに出てきてしまったと、私はまた部屋に引き返していた。
部屋には秀吉さんが買ってくれた寝間着が置いてある。
女中さんが、私がお湯を浴びてる間に準備しておきますよと言ってくれたけど…自分でやれる事はしたい。
寝間着を取りに行って、改めて湯浴みしに行こう。
部屋では多分、秀吉さんがお膳を片付けて布団を敷いている頃だろうけど。
(なんか…顔、合わせづらいなぁ)
さっき自覚してしまった気持ち。
秀吉さんの事、好きなんだって。
本当は秀吉さんに触れてほしいんだって…
それに気づいてしまったから。
どんな顔をして会えばいいんだろう。
私の性格上、取り繕うのは無理に等しい。
改めて部屋の前まで来て、襖の前で一旦呼吸を整える。
普通に、普通に。
『忘れ物しちゃった』って笑って言おう。
秀吉さんは『しょうがないやつだな』と呆れてまた目尻を下げて微笑んでくれるはずだ。
……ああ、そんな所、好きだなぁ
(ううう…自覚すると、なんでこんなに)
『好き』という気持ちはいくらでも溢れ出す。
私って、本当に単純だな。
そう半ば呆れながら、襖を開けようと手をかけた。
────と、その時
「ん……っ」
(……?)
何やら襖の奥から息を詰めたような声が聞こえ、私は思わず開けようとした手を止めた。
秀吉さん…だよね。
だって、ここは秀吉さんの部屋だし。
何やら襖を隔ててすぐ側に、人の気配を感じる。
自然と聞き耳を立ててしまうと…
少し苦しそうな、でもどこか艶っぽい声が微かに聞こえてきて。
その艶めかしさに、ドキンっと心臓が高鳴った。