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【イケメン戦国】新篇 燃ゆる華恋の乱☪︎華蝶月伝

第2章 拝啓 愛しい君へ《前編》* 明智光秀






────安土への帰り道は
はらりはらりと粉雪が舞っていた




俺は暑さも寒さも、さほど感じないのかもしれない。
いつもの格好に笠だけを被り…
九兵衛だけを連れて、帰路についている。

今回は最近傘下についた諸国の、言わば抜き打ち調査と言うやつである。

謀反の疑いはないか、怪しい動きはしていないか。
また、国全体の整備の具合や、そこに住む者達の暮らしぶりなども偵察してくる。
実際に目で見なくては解らないこともあったので、俺が出向いていた訳だ。

特に問題もなく視察は終わり…
後は信長様に報告して、俺の任務は終了である。




「光秀様、あれは美依様ではないですか?」




城下に入り、城へ真っ直ぐに向かってみると。
城門の近くに来たところで、九兵衛が一点を指差した。

見てみれば城の城門で、美依がウロウロしながら百面相をしている。

傘を差した状態で、あっち行ったりこっち行ったり。
悩ましげな顔かと思えば、急にはにかむように笑んで、手で顔を押さえたり。



(……相変わらず解りやすい小娘だ)



その理由が解るだけに、思わず頬が緩んだ。
大方、"あの文"について俺に用があるのだろう。

俺は調査から帰る直前、美依に文を書いた。
たわいない雑談と…自分の想いを。
『お前を愛しているよ』と。
追伸でさりげなく求愛の言葉を書いたのだ。

それを美依が本気にするかは解らない。
俺は至って真面目に本心を書いたけれど…
美依はいつもの"意地悪"だと思ったかもしれないが。

そして、返事を期待しているとも書いた。
それはつまり、美依が俺の想いを受け入れて、恋仲になってくれるのか…という意味だ。

まあ、何はともあれ…
今城門に美依が居るのは、俺を出迎えるためだと理解して良いだろう。

俺は一旦足を止め、九兵衛の方に向き直る。
そのまま、先程の問いかけに答えてやった。




「ああ、俺に用があるのだろう」

「左様でございますか、よく帰る日をご存知で」

「美依に文を書いて知らせてやったからな」

「……なるほど」




すると、九兵衛もふっと意味深に笑い…
笠を手で掴むと、何やら朗らかに言ってみせた。






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