第2章 拝啓 愛しい君へ《前編》* 明智光秀
(さほど重要ではないって…どこが!)
これは光秀さんの意地悪なんだろうか。
私を困らせようとして…
意地悪な事を書いてきたのだろうか。
でも真面目だって。
良い返事を期待してるって…
つまりは私と恋仲になりたいとか、そういう事?
「うわぁ〜……」
思わず声に出して嘆いた。
こんな大切な事を追伸にサラッと書くなんて…
本当に光秀さんらしい文の書き方だ。
きっと今頃、私の反応を想像しているに違いない。
それこそがきっと、光秀さんの思うツボなんだと…手の上で転がされている感覚がして、また落ち着かない。
光秀さんが私を愛してるとか。
全く想像もしていなかった事で、びっくりしすぎてもう、どうしたらいいのだろう。
だって、それってつまり……
────私達、両想いって事だよね?
私は密かに光秀さんを想っていた。
でも、それは光秀さんに伝わるとは思ってなかったし、ましてや両想いとか…
光秀さんに『小娘』としか思われてない私が、女として見てもらえているなんて、絶対ないと思っていた。
だからこそ、動揺が半端ない。
まさかの光秀さんからの告白。
まるで付け足しのような、一番大事な話。
本当に…この人はどこまで私を振り回すんだろう。
「……っ、どうやって返事をしたらいいの…ああもう、光秀さんのばかばかばか!」
今度は畳に突っ伏して、畳をばしばし叩いた。
自分がいたたまれない、こんなに動揺して…本当に恥ずかしい以外の何者でもない。
でも、三日後。
光秀さんは帰ってきたら、私に返事を聞きに来るだろう。
その時、私も好きだと答えたら…
どんな顔をするかな、今度はあの低く甘い声で、直接『愛しているよ』と言ってくれるのだろうか?
(そんな事言われたら…憤死しちゃう!)
自分の考えに動揺して、また照れる。
もう沸騰した頭は、どうしようもない。
そんな事を繰り返しながら、その気持ちが慌ただしい日は過ぎていった。
それでも、三日後。
光秀さんが帰ってくるのが楽しみだなぁなんて。
心が浮つき、また落ち着かなくなる。
私は光秀さんに答える台詞を何回も頭でシミュレーションしながら…
その日を緊張ながらも心待ちにしたのだった。
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