第4章 蒼き隻眼竜の逆鱗 * 伊達政宗
「信長様はそんな事する人じゃないし、私もさせないよ!何言ってるの?!」
「じゃあ…その口づけの痕、なんだよ。信長様がつけたんだろ?」
「こ、これは、その……っ」
「つけられた理由を言え」
「……っ」
すると、美依は言いにくそうに口籠もる。
俯き、視線を泳がせて…
その態度は、荒ぶった俺の心をさらに逆撫でした。
理由、言えないのかよ。
他の男に、口づけの痕なんて残されて…
お前の肌は、どこもかしこも俺のものなんだよ。
(それを、美依は解っていない)
こんな事されて、黙っていられる筈もない。
しかも、理由が言えないとなれば、やはりやましい事があったのでは…と想像してしまう。
美依に限って、俺以外に身体を許すなんて事は絶対しないと信じているけれど。
でも…だったら何故理由を話さない?
『何も無かった』のなら…
何故、濁すような態度を取るのか。
「言えないのか、美依」
「その、言いにくくて…」
「へーえ…言いにくい。なんか、俺には相談出来ないような悩みも信長様に話してたっぽいしな?」
「それは、そのっ……」
「俺に隠し事ばっかりじゃねぇか、お前」
「……っ」
俺が言えば、美依は目を見開き『心外だ』と言ったような視線を向けてくる。
心外なのは俺の方だ。
一番美依の近くにいて頼ってほしいのに…
そうやって、隠して。
もちろん、解り合える事ばかりじゃないが、少しでも美依の力になってやりたいのに。
そして、痕を付けられた理由も言えない。
俺は…そんなにお前にとって軽い存在なのか。
────だったら、解らせてやる
その瞬間、頭の線が一本切れた感覚がした。
そして溢れ返るは漆黒の感情。
ドロドロと流れ出して…
俺をまた、醜い劣情に染めていく。
俺がどれだけお前を愛しているか。
そして、お前は俺の女だと言うこと。
それをきっちり解らせる必要がある。
それに───………
言わないなら言わせるようにするまで。
お前が隠す、その『核』を。
俺の前に曝け出せないなら、もう。
"お仕置き"しかないよな?