第4章 蒼き隻眼竜の逆鱗 * 伊達政宗
美依を引っ張り、御殿に向かいながら…
俺は激しい劣情と戦っていた。
美依には初めての感情ばかり教えられた。
勿論、今抱いている、このドス黒い想いも。
こんなものは、今まで感じたこと無かったのに。
美依に対する独占欲。
そして、信長様への〇〇。
その感情に名前を付けるのは容易かった。
でも、認めたくない己も居て……
色んな思いがせめぎ合い、酷く混乱しながらも、荒ぶる激情が渦巻いていたのだ。
────そして、その一方
二人の去っていく後ろ姿を見ながら、信長はまたもや愉快そうに笑った。
こうも"上手くいく"とは。
美依には申し訳ないが、悩んでいた悩みの"答え"はこれで出たのではないかと…
信長はひとつ息をつき、羽織を翻した。
「だから言ったであろう。貴様よりも…政宗の方が貴様に入れ込んでいるとな。政宗があそこまで感情を剥き出しにするのも珍しい、それ程…愛しているのだろう」
その呟きは、誰にも聞こえない。
寒い冬空の空気に溶けて…
見上げれば冬の鳥が鳴き、羽ばたいてはその冬空へと姿を消して行った。
*****
「わぁっ……!」
美依の身体を、やや乱暴に自室に押し込める。
俺は続いて部屋に入り、後ろ手で襖をぴしゃりと閉めた。
不安そうな美依の顔。
そんな美依を俺は壁際へと追い詰める。
身体を囲うように手を付き…
そのまま美依を見れば、美依は俺を見上げながら、切なげに瞳を揺らした。
「政宗…?」
「美依…単刀直入に聞く」
「な、何……?」
「お前、信長様に抱かれたのか」
「は、はぁ……?!」
すると、美依は目を見開き、驚いたような声を上げた。
これは、どう捉えるべきか。
図星を刺されたから、驚いたのか。
それとも…予想外の事を言われたから、こんな反応をしたのか。
とにかく、美依の口から真実を聞きたい。
その口づけの痕なんて付けられた理由を。
俺が黙って美依を見つめれば…
美依は首を横に振り、俺を見つめ返しながら必死な様子で言葉を紡いできた。