第4章 蒼き隻眼竜の逆鱗 * 伊達政宗
(お、来たな)
甘味を作り終え、俺は城の城門で美依と信長様を待ち構えていた。
すると、遠くから馬に乗った信長様と美依、そして数人の家臣達がやって来るのが見えて…
よりにもよって、信長様と美依…同じ馬かよ。
それは少し気にかかったが、俺はその一団に向かって手を振る。
さすれば、馬を操る信長様の前に座っている美依が俺に気づき、大きく手を振ってきて。
そんな姿が可愛いなぁと思っていると、信長様はすぐさま俺の元に馬を寄せてきた。
「出迎えご苦労、政宗」
「正確には美依の出迎えですがね」
「ふっ…言ってくれるわ」
「政宗、ありがとうー!」
「いや、俺が早く顔を見たかっただけだ」
信長様が馬を降り、美依も続いて馬を降りる。
降りるのを少しだけ手伝ってやると、美依は俺の手を掴みながらふにゃりと笑った。
ああ、この笑顔も久しぶりだな。
久しぶりに見る愛らしい笑顔に心が踊る。
俺が美依の頭を撫でてやっていると、そんな様子を見た信長様が不敵に笑い…
美依に向かって、何やら意味深な言葉を口にした。
「美依…俺が言うのもなんだが、貴様の悩みはただの杞憂ではないか?」
(え……?)
信長様の発言に、頭に疑問符が浮かぶ。
悩みって…美依は何か悩んでいるのか?
そんな話は初耳である、しかもこの口ぶりだと信長様は『悩み』について何か知っているようだ。
すると、美依は少しだけ頬を染め。
信長様に向き直ると、頭を下げながらおどおどした声で言った。
「そ、その節はお世話になりました…」
「気にするな、貴様は貴様らしくあれば良い」
「あはは、そうですね……」
「……」
何だこれ、なんのやり取りなんだ?
心の中に、何やら黒いモヤが立ち込め始め、思わず顔をしかめる。
信長様と美依の間で何かあったのは察した。
視察の途中で何かあったのか、それは美依の『悩み』に関する事なのか。
『世話になった』と言うからには…
美依が信長様を頼ったか、迷惑を掛けたという意味なのだろうか。
────一体俺の知らない所で
この二人の間に、何があった…?