第4章 蒼き隻眼竜の逆鱗 * 伊達政宗
『愛おしいものには躊躇わず触れる』
それが俺の振る舞い方。
美依とも、始まりはそれだったし。
だが───………
それは、いつしか形を変えた気がする。
今では『美依以外は触れたくない』
そんな風にすら思うようになった。
あいつに魅せられてしまったから…
もう他の存在は考えられないのだ。
だから、時折夢を見る事が憂鬱になる。
こんなに溺愛してしまって…
いつか俺が俺でなくなるのではないか、と。
「あ…今日帰ってくるな、あいつ」
と、その時。
頭に浮かんだ事に、俺は思わず口元を緩めた。
それは愛しい美依に久しぶりに会えるという、とても心が弾む事で。
指折り待ち続けた今日でもあったために、また夢を見てしまったという憂鬱は一気に吹き飛んだ。
今美依は、信長様と共に地方へ視察に行っている。
視察もそうなのだが、反物の買い付けを一緒にしたいという事で、美依も同行する事になったのだ。
故に、今は美依と離れ離れ。
恋仲の女が、別の男と同行は気に食わないが…
相手は信長様だ、そうも言ってられない。
まぁ、信長様なら何もないだろうし…
そんな事を気にするくらいなら、あいつを迎えに行って早々に顔を見て安心したい。
(────早く、逢いてぇな)
俺は起き出し、帰ってきた美依に美味いものでも食わせてやろうと、そのまま台所に立った。
頭に浮かぶのは、喜んだ美依の顔ばかり。
それを思い浮かべるだけで…
とても幸せな気持ちになり、心が温かくなったのだった。
その日も甘美な甘い夢を見ていた。
美依と身体を重ねる、その刹那を。
俺は美依を愛し、夢に見るまでに溺れていた。
そう───………
その事が、ある"一悶着"を起こす羽目になる。
俺はまだ気づいていなかったんだ。
信長様に抱いた"気に食わない"と言った感情が、思っているよりドス黒くて、醜いものだったことに。
それはある二文字の感情。
────『嫉妬』
俺には無縁だと思っていた、この感情が…
ある些細な事をきっかけに暴走し、美依と拗れる事になってしまうのだ。
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