第3章 拝啓 愛しい君へ《後編》* 明智光秀
「大丈夫だから、起きてます」
「本当に平気か?」
「はい。せっかく一緒にいるのに…寝ちゃったら勿体ない気がして」
「……そうか」
(……また愛らしい事を言う)
そんなに俺と一緒に居る時間が嬉しいのか。
寝顔を見られなくなったのは残念だが…
起きている時の顔の方が、もっと可愛いな。
俺は美依の背中に手を回し、肌を優しく撫でる。
抱かれた名残りからか、まだ肌は火照ったままだ。
それが愛しくて、気持ちいい。
そう思って肩や背中や腰を撫でていると…
美依は裸の胸に顔を埋め、すうっと深く呼吸をした。
「光秀さんの匂いだ……」
「どうした、気になるか?」
「安心するなって思っただけです。好きな人の匂いってなんか落ち着きます」
「そうか、ならいい」
「あの、光秀さん……」
「どうした…?」
すると、美依は胸元から顔を上げ。
澄んだ黒真珠の瞳で、俺を見つめてきた。
何かを訴えるような、切なげな眼差し。
そのまま美依の言葉を待っていると…
予想もしてなかった、そんな発言が美依から飛び出した。
「次は痛くないと思うので、光秀さんの好きに抱いていいですからね…?」
「……は?」
「だって私を気遣って、光秀さん…思うように気持ち良くなれなかったと思うから…」
「……」
「だから、そのっ…次は……!」
そこまで言って、美依の顔が赤くなる。
それはつまり…次の抱かれる約束をしたいのか?
もちろん次も、またその次もあるのだけれど。
まさか美依から『次』の話が出てくるとは思わなかったな。
俺が思わずぷっと吹き出すと、美依が若干顔を引き攣らせた。
だが…美依からその話が出たとなれば、喜んで約束をしてやるのだがな?
「お前、そんな約束をしていいのか」
「え……?」
「次の日、起きられなくなるぞ?」
「そ、そんな激しくとは……!」
「俺の"好きに抱いていい"とはそう言う事だ」
「……っ」
赤面する美依の顔を覗き込む。
そうだな、次はもう少し情熱的に。
お前が蕩けて形が無くなるくらいまで愛して……
また今以上に俺を好きにさせるのも、
悪くない。